女が一人、薄暗い部屋で脇息に身を預け、項垂れている。 脇息には螺鈿の細工が施され、纏っているのは一の衣を欠いた紅の薄様うすようの襲かさね、高貴さの漂う佇まいが、いかにも雅だった。 女の見つめる先には香炉があった。 火櫃の側に置かれた香炉は煙を…
大きな公園から港へと続く大通りには、おびただしい数の人が行き来しており、その誰もが一様ではなく、異国から渡ってきたであろう者や、人ならざるもの――妖物あやかしものも多くいるようだった。 どこの街でも妖物は稀に見掛けるにしても、いまだ鎖国状態の…
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